ラスベガスの神話シリーズ:ラスベガスストリップ、家族連れにアピールも失敗に終わる
Las Vegas Convention and Visitor Authority(ラスベガス観光局)の新しいTVコマーシャルが面白いと話題になっている。ラスベガスにある「唯一の食べ物」はブロッコリーで、「アイスクリームも何もかも全てがブロッコリーなんだ」と父親が言うと、息子は不機嫌になって家にいることにする、というものだ。
90年代、ラスベガスはファミリー層に魅力をアピールしていた。だが現在では子供抜きで楽しむのが主流だ。それは、家族連れにアピールしたものの大きな失敗に終わり、大幅な収益減につながったからである。
だが実際はそうではない。
1993年、新しいMGM Grandがオープンした。6,852室を有する世界最大の単独ホテルで、建設費が10億ドルを超えた最初のリゾートであった。(古い方はBally’s、現在はHorseshoeとなっている。)また、1968年にオープンしたCircus Circus以来、ラスベガスの新しいリゾートで初めてファミリーを直接ターゲットにしたリゾートでもあった。
カジノ内には「オズの魔法使い」のディスプレイや、敷地内には33エーカーに及ぶ1億ドル規模の遊園地が建設された。ジェットコースターや急流下り、映画スタジオのバックロットを模したボートツアーなどがあった。
1996年オズの魔法使いは姿を消し、2000年には遊園地も閉鎖された。その理由はいつものことながら入場者数の減少にあった。当時、Las Vegas Review-Journal紙は、MGM Grand Adventuresの来場者の3分の1は、テーマパークがどこにでもあって常に最新のスリリングな乗り物を体験できるカリフォルニアから来ていることを考慮に入れていなかったと推論している。
しかし、ラスベガスの家族向けアトラクションが失敗したと思われていた時期にオープンした他のアトラクションのほぼ全てが生き残り、今も賑わっている。Circus Circus Adventuredome、New York-New Yorkのジェットコースター、Stratosphere頂上のBig Shot、Mandalay Bayのビーチと波のプール、M&M’s Worldなどだ。
マジカルではなかった
90年代にデビューし、2000年代に閉鎖した子供向けアトラクションは他にも、Caesars Magical Empireがある。12歳以上の来場者を対象とした「ハイテクで精巧なテーマのワンダーランド」はほとんど忘れ去られている。1996年にオープンし、2002年に閉館した。3時間で夕食付きとはいえ、料金はなんと(当時としては)1人125ドルから200ドルもした。そして正直なところ、評判は散々なものであった。
これら2つの閉鎖にもかかわらず、ラスベガスでは2000年代、新たな子供向けアトラクションが毎年オープンした。The Stratosphere(現在のThe Strat)は、2005年にハイローラージェットコースターが撤去されたものの、その上部デッキで今でもスリルを味わえる3つの乗り物(Xスクリーム、インサニティ、スカイジャンプ)をデビューさせた。世界一高いが、世界一遅いコースターであった。
また、ファミリー向けをプッシュする中でデビューした子供向けのショーもまだ残っている。現在では、ExcaliburのMac Kingのコメディマジックショー、Miracle Mile ShopsのNathan BurtonのマジックショーやPopovich Comedy Pet Theaterなどがある。
昨年は、Bally’s/Horseshoeの旧スポーツブックに代わり、7,000平方フィートの動画アーケードが設置された。そして、没入型の20万平方フィートのアート体験「Area 15」(VRゲームルーム「Virtualis」をフィーチャー)が2020年にオープンし、テーマパークとつながっていないUniversal初の通年ホラー体験ができるよう拡張中である。
失敗の証拠となる失敗
MGM Grand遊園地の次に、ラスベガスが家族連れにアピールできなかった証拠としてよく挙げられるのが、かつてMGMのTreasure Islandの前で毎晩5回上演されていた無料の海賊ショーである。
2003年、MGMは「The Battle for Buccaneer Bay」を「The Sirens of TI」に変え、MTVに影響されたこの試みは、10年後の2013年に新しいカジノオーナーのPhil Ruffin氏が終了させるまで続いた。
「The Battle for Buccaneer Bay」が終了した際、メディアは「ラスベガスの家族向けショーがとうとう消えてしまった」と大騒ぎした。しかし、この閉鎖が本当に意味するのは、トレンドの終焉であった。
皮肉なことに、以前は両海賊ショーの楽屋として使われていたカジノスペースは現在、2016年にオープンしたMarvel Avengers Stationのアトラクション用にVictory Hills Exhibitionsが借りている。
数字で見る成功
ファミリー向け失敗神話の最大の問題点は、数字がそれを裏付けていないことだ。1993年から1994年の間に、ラスベガスの訪問者数は2350万人から2720万人に増加した。最近のパンデミック後の回復を差し引いても、これは観光客の年間増加率としては過去最大である。
LVCVAによると、1992年から1996年にかけて、ラスベガスを訪れるファミリー層の割合は7%から12%に増加した。現在この数字はなんと21%にもなっている。
今度、ラスベガスのブロッコリーアイスクリームのコマーシャルを見たら、別の捉え方をしてみてほしい。ラスベガスは今では家族連れに強くアピールしており、ブラックジャックのテーブルで飲んだり愚痴を言ったりする大人をもっと必要としているということだ。
出典元:Casion.org