2022年も残り1か月となり、カジノ事業者は今年ゲーム総収入(GGR)の年間記録を更新する可能性が高いようだ。しかし調査会社のMoody’s Investors Serviceによれば、業界はこれからさらに厳しくなる可能性が高いという。
同社によると、毎月の前年比GGRの増加ペースは鈍化しているものの、カジノに向けられる個人消費には上昇または安定化する余地が残されているという。これは、コロナウイルスのパンデミックによって生じた需要の滞留が、依然としてきっかけとなっているためである。しかしそのペースの鈍化を無視してはならない。
同社の指摘によれば、「アメリカのゲーミング状況は依然として良好だが、収益の増加ペースの鈍化は、カジノに対する消費者の需要が今後数か月のうちに厳しくなることを示す初期の兆候かもしれない」という。「インフレ率の上昇に伴い、消費者は基本的なニーズにより多く支出するようになるため、ゲーミング収益の伸びはさらに勢いを失うと予想される。現在の経済的な課題が長引けば長引くほど、アメリカのゲーミング発行会社が堅調な業績を維持することは難しくなるだろう。」
国内ゲーミング産業の強さの一例として、ネバダ州は10月までの20か月間、GGRが10億ドル以上続いていることが挙げられる。これは、高インフレや金利上昇といったマクロ経済的な逆風にもかかわらず、である。
インフレと金利の問題
一部のゲーミング経営者は、インフレが全米のゲーミング施設の支出傾向に重くのしかかっているとすでに指摘している。それは、ガソリン価格の高騰による地方カジノへの外出の減少や、ラスベガスなど観光地での衝動的な消費の減少など様々な形で表れている。
カジノを含む旅行・レジャー産業は消費者裁量産業であるため、インフレや観光客の財布の紐が固くなるといったことに非常に敏感なのだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを抑制するための主要な手段である金利の上昇は、別の理由でゲーム産業の足かせとなる可能性がある。このグループはアメリカで最も負債を抱えているグループの一つであり、借入コストの上昇は、場合によっては必要な借り換えの魅力を減退させてしまう。
Moody’sは次のように付け加えている。
「最終的には、アメリカのゲーミング企業は、より厳しい金利環境下で借り換えを行う必要がある。今後3年間に満期を迎える負債は多くないが、2025年12月までに多額の資金を必要とする負債を償還するアメリカのゲーミング会社が3社ある。」
同社は「金利が大幅に上昇する時期に、負債資本構造の大部分を借り換える必要がある」可能性のある事業者として、Caesars Entertainment(NASDAQ:CZR)、MGM Resorts International(NYSE:MGM)、Wynn Resorts(NASDAQ:WYNN)を挙げている。
Moody’s、フリーキャッシュの減少を予想
フリーキャッシュフローはカジノゲーム株に関して投資家が最も欲しがる特性の一つであるが、マクロ経済の懸念によって金利・税金・減価償却前利益(EBITDA)が抑制されると、この指標はつまづく可能性がある。
また、フリーキャッシュフローの減少はオペレータの債務返済能力を圧迫する可能性があり、不況が到来した場合の懸念材料となり得る。
Moody’sは次のように結論付けた。
「経済が弱体化し続ければ、EBITDAの業績に圧力がかかり、金利上昇圧力は負債コストの上昇に伴いフリーキャッシュフローをカニバリゼーションするだろう。」
「同様に、営業状況の悪化が続けば、現金資源を維持するために資本支出はさらに維持水準に向けられる可能性がある。弊社はアメリカのゲーミング発行者が、通常ディストレスト・エクスチェンジ(DE)として分類されるファイナンシャル・エンジニアリング型の取引、あるいはデフォルトにますます向かうと見ている。」
出典元:Casino.org